~服用性を向上させる
チュアブル錠~
日医工にキャリア入社し、製剤技術部を経て製剤開発部に配属されたMさん。製剤開発部で、噛み砕いて服用する「チュアブル錠」の開発を任されることになりました。初めて手がけたこの開発について、工夫した点や苦労したことを伺います。
製剤開発部のMさんに
「服用性を向上させるチュアブル錠」の開発について聞いてみました。
インタビュアー
社長室 部長 Sさん
開発者
製剤開発部 Mさん
2012年7月
キャリア入社
チュアブル錠とはどのような剤形なのか、そして
どのような工夫で服用しやすくしたのか気になります。
まずはチュアブル錠の特徴から教えてください。
はい。これは咀嚼、つまり噛み砕いて服用する錠剤です。それから、OD錠(口腔内崩壊錠)ほど速くはないのですが、口の中で溶かして服用することも可能です。おもに嚥下困難な小児用の製剤に採用されます。小さく噛み砕くので、子どもでも服用しやすいと思います。
噛んで溶かす
なるほど。OD錠と似ているようですが、チュアブル錠は咀嚼して服用できる点が異なるのですね。
はい。ちなみに噛み砕いて服用するにしても、水で流し込む場合と、ラムネのように水なしで口の中で溶かして飲み込む場合と、実際に服用される場合を想定して開発を進めました。ヒトBE試験(先発製剤と生物学的に同等であることを証明する試験)も、「噛み砕く」「溶かして飲む」方法に、「水あり」「水なし」という方法を加え、4つの服用条件で実施しています。つまり、このチュアブル錠は、1つの剤形でいろいろな服用方法に対応できるということです。
人によって服用しやすい方法は異なるでしょうから、いろいろな方法に対応できるというのは大きな特徴ですね。ところで、服用性を向上させるためにどんな点を工夫したのでしょうか。
営業研修に行った際に、「子どもの口の中のセンサーは敏感なので、不味いと服用してもらえない」と聞きました。そこで、子どもの好む味になるよう検討しました。いくつか検討したのですが、社内アンケートで好評だったこともあり、子どもにもなじみのある、いちご味としました。
子どもが飲みやすい薬は、飲ませる保護者にとっても安心感や利便性がありますね。いちご味は、確かに子どもにも受け入れてもらいやすそうです。
チュアブル錠の開発に当たり
どのような点に苦労して、どうやって乗り越えたのでしょう。
当社として初めてのチュアブル錠の開発だっただけに、苦労も多かったと思いますが、一番大変だったのはどんな点ですか?
そうですね、試作段階で良好な結果が得られず、手詰まり状態になったことでしょうか。原因究明にあたり、製法、添加剤、原薬などいろいろな要素がある中で何が問題なのかを検討し、1つ1ついろいろな方法をたくさん試しました。もちろん大変でしたが、日医工は周囲の人に相談しやすい社風だったので、私も上司や先輩方にアドバイスをいただきながら、進めることができました。
仕事の流れや、仕事に取り組む姿勢について
開発部ならではの視点や考え方に興味があります。
開発とはどのような仕事をするのでしょう。Mさんの仕事の内容や流れについて、分かりやすく教えてください。
はい。私は開発部の機能製剤グループで、固形製剤の開発業務に携わっています。具体的な業務としては、初期の処方設計から、ラボでの試作、パイロットスケールへのスケールアップ製造、治験薬製造、申請資料の作成などです。申請後は、品質や原薬などに対する厚労省からの問い合わせへの対応、製剤技術部への技術移管、実生産スケールまでの工業化検討への立ち会いなどを行います。承認を得られれば、営業部門に品質情報を説明する業務も担います。開発業務は長期にわたりますし、いろいろな部署のスタッフにお願いすることも多いですね。
なるほど。ずっとラボにこもっているイメージを持たれがちですが、仕事の内容は多岐にわたる上、他部署とのコミュニケーションも必要なんですね。では設計者として仕事をするための心構えや、開発に取り組む姿勢について聞かせてください。
はい。もともと製剤技術部に所属していて、製造現場で作業する機会が多かったため、安定したものづくりがいかに大切であるかを痛感していたんです。ですから開発する立場になってからは、選択する処方・製法が、最適であるかどうかの判断を大事にしています。「この製造条件では、製剤の品質にどう影響するのか」ということを十分に確認し、より良い製造条件を見出すことが重要だと考えています。
長い時間をかけて真摯に開発に取り組む様子を伺うことができました。
Mさん、ありがとうございました。