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《薬剤師クロストーク》
薬剤師が、製薬企業で拓くキャリア。

クロストーク
<トークパートナー>
平尾さん
信頼性保証本部 本部長

Hさん(写真左) / 平尾さん(写真右)
H さん 
出身都道府県/兵庫県
卒業学部・学科/大学卒 薬学部 薬学科 専攻
入社年/2020年4月
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Q:現在、それぞれどのような仕事を担当していますか?

Hさん:  私は品質管理職として富山工場QC部の、製剤品質を評価するチームで働いています。完成した製品が定められた規格に適合しているかだけでなく、これまでと比べて極端に高い値や低い値が出ていないかなど、普段と異なる傾向がないかも確認しています。
例えば、規格内であっても、過去の結果と比べて不自然な数値が出ていれば、原因を調査します。製品そのものに問題があるのか、試験を行った際の操作なのか、分析機器の状態なのかを一つずつ確認していきます。
平尾さん: 私は信頼性保証本部長と総括製造販売責任者を務めています。信頼性保証本部は、製造された医薬品を世の中へ送り出すための「品質の最終関門」です。製品を出荷した後も品質や安全性を監視し、不具合や副作用の情報が寄せられた際には調査を行います。必要に応じて、医療機関への情報提供や製品回収の判断にも関わります。
Hさんが所属する、QC部門が出してくれる試験結果は、私たち信頼性保証に関わる部門が製品を出荷してよいか判断するための重要な根拠となります。試験を行って数値を出すだけではなく、その数値が製品の状態を正しく表しているかまで追求することで、確かな品質を支えています。
Hさん: 出荷後の医薬品が、使用期限まで品質を保てているか確認する安定性試験も重要な仕事です。例えば出荷から1年後、2年後と定期的に試験し、出荷時と変わらず、安心して服用できる製品であるかを確かめます。
平尾さん:  そこで問題が確認された場合は、信頼性保証本部にも報告が届きます。QC部が正しいデータを取得し、私たちがそのデータをもとに市場への対応を判断する。部署は異なりますが、一つひとつの医薬品の品質を一緒に守っている関係ですね。

Q:なぜ薬学を学び、その後、製薬企業を選んだのですか?

平尾さん:  私は子どもの頃からものづくりが好きで、特に夢中になったのがプラモデル作りでした。父がバイク好きで、工具を使ってカスタムを重ねている姿を目にしていました。出身が三重ということもあり、中学生の頃には究極のものづくりができそうなF1チームのエンジニアに憧れていました。
そんななか、高校で化学を学び、複雑に見える現象にも規則性や理由があり、それが実際の生活に応用されていることに面白さを感じました。また、出身地の四日市では、石油化学工業のコンビナートが地域の発展を支える一方、公害や異臭、光化学スモッグなどの健康問題も身近にありました。「化学と人の健康の両方を学びたい」「研究での学びがものづくりに繋がりそう」と考え、薬学部へ進みました。
Hさん:  最初から薬剤師を目指していたわけではなく、ものづくりが原点だったんですね。私は両親が薬剤師で、薬学が身近にある環境で育ちました。小中学生の自由研究でも、色の成分を分けたり、植物から精油を取り出したりと、化学に縁のあるテーマを選択することが多かったです。高校で化学を学んだときに「もっと深く知りたい」と感じ、薬学部へ進学しました。
平尾さん: Hさんは、大学での研究でも今に通じる分析を行っていたのでしたよね。
Hさん: はい。成分を分離して分析する液体クロマトグラフィーに関する研究をしていました。その知識や分析機器を扱った経験を活かしたいと思い、製薬企業を志望しました。
平尾さん: 私は大学卒業後、まず地元の病院で薬剤師として働きました。薬剤部長と私の2名体制だったので、新人ながら服薬指導、病棟での薬の管理、発注や在庫管理、病院内での勉強会、MRからの情報収集など、ありとあらゆる仕事を任せてもらいました。とても充実していましたが、毎日医薬品に触れる中で、錠剤の形や性質、製造工程そのものへの興味が大きくなっていったんです。
Hさん: 薬を使う側で働いたことで、今度はつくる側へ行きたいと思われたんですね。
平尾さん: まさにそうです。「薬を患者さんへ届けるだけでなく、自分もつくる側に回りたい」と考え、製薬企業へ移りました。今振り返ると、子どもの頃から好きだったものづくりに、薬学を通じて戻ってきたのだと思います。

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Q:仕事の中で、薬剤師資格や薬学の知識はどのように活きていますか?

Hさん:  品質管理の業務すべてが、薬剤師でなければできない仕事というわけではありません。ただ、試験で異常な結果が出たとき、その原因を調べる場面では、薬学部で学んだ化学、法規、統計学などの知識が活きていると感じます。
例えば、試験結果をグラフにしたとき、一見すると数値が下がり続けているように見えることがあります。でも、過去のデータまで確認すると、実際には通常想定される範囲内の変動という場合もあります。
平尾さん: 直近のデータ推移だけで「品質が低下している」と判断してはいけないということですね。
Hさん:  そうですね。「下がっているから異常」とすぐに決めるのではなく、製品の品質に影響する変化なのかを客観的に判断する必要があります。大学で統計学を学んだことが、こうした場面で役立っています。
平尾さん: 医薬品は、製造したすべての薬を分解しての全数検査を試験するわけにはいきません。そのため、一部を取り出して試験し、その結果から製造した医薬品全体の品質を推定します。どれだけの数を試験すれば適切に評価できるのかを考えるうえでも、統計の知識は活きてきます。 また、異常なデータが出たときは、結果の数字だけを見るのではなく、薬の溶けやすさやpH、粒の大きさなどの物性、試験時の反応や発色の仕組み、HPLCなどの分析機器の原理まで考えます。
Hさん:  製品に問題があるのか、原料の性質によるものなのか、試験時の操作なのか、分析機器のトラブルなのか。さまざまな可能性を切り分けていく必要がありますよね。
平尾さん: 分析では知識や経験が多いほど、原因を考えるための引き出しも増えますよね。薬学部で学ぶ微生物学の研究も、注射剤などの衛生管理を考えるうえで役立ちます。
Hさん:  私も、試験で期待した反応や発色が得られなかったとき、大学で学んだ反応の仕組みから原因を推測し、解決につなげられることに面白さを感じます。原因を早く正確に突き止められれば、医薬品の出荷の遅れや欠品を防ぐことに加え、同じ試験手技による異常が二度と発生しないようなシステムを構築することにもつながります。
平尾さん: 資格そのものだけでなく、薬剤師になるまでに学んだ幅広い知識が、日々の判断を支えてくれる礎になっていますね。

Q:薬剤師資格や臨床経験は、 製薬企業での仕事やキャリアにどう活かせますか?

平尾さん: 病院や薬局での勤務・実習を通じて、薬を実際に使う現場を知っていることは、製薬企業でも大きな強みになります。私自身、病院薬剤師として働いた経験があるため、医療機関から製品に関する問い合わせや意見をいただいた際も、現場の状況を具体的に想像しながら対応できます。
Hさん:  医療機関へ説明に伺う際も、病院での経験は役立ちますか?
平尾さん: 役立ちますね。過去に、病院薬剤師だったことをお伝えすると、同じような現場を経験した者同士として会話が深まることがあります。例えば、「包装から薬を取り出しにくい」「錠剤を扱いづらい」といった意見も、病院で日々多くの薬を扱っていたからこそ、不便さを具体的に想像できます。ご意見に感謝し、より使いやすい製品につなげたいという想いに至っています。
Hさん:  私も病院や薬局での実習を経験しています。現在は数値や分析機器と向き合う仕事ですが、「この試験の先に患者さんや医療従事者がいる」という意識につながっています。私たちが試験結果の取得に手間取ると場合によっては出荷が遅れ、薬を必要とする方へ届かなくなる可能性もあるため、一つひとつの判断に責任を感じます。
平尾さん:  薬を使う側と、薬をつくり品質を守る側。その両方の視点を持てることが、薬剤師が製薬企業で働く強みですね。また、製薬企業には、製造管理者や総括製造販売責任者など、薬剤師の専門性を活かして活躍できる役割があります。ただ、資格を取得すれば、すぐにこうした仕事を任されるわけではありません。
Hさん:  資格だけではなく、現場での経験や判断力を積み重ねることが必要ということですね。
平尾さん: そうです。私が製造管理者を務めた際には、行政による工場査察対応の中心となり、医薬品がルールに沿って製造され、品質と安全性がどのように保証されているかを説明しました。最後に「よく管理されています」と評価いただいたときは、現場で積み重ねてきた取り組みが認められ、大きな達成感がありました。現在の総括製造販売責任者も、会社の品質方針を示す責任の大きな役割です。
Hさん:  私も薬剤師資格を持っていることで、当社の視察に来社された方へラボの案内や手順書の説明をしたり、逆に試験委託している外部試験機関の監査に赴くなどと挑戦する機会がありました。一つの経験が次の仕事につながり、できることが広がっていると感じます。
平尾さん: 薬剤師資格は、今の仕事を支える知識や視点になるだけでなく、経験を重ねた先にある責任ある役割への可能性も広げてくれます。会社としても、薬剤師の専門性が活きる役割を担っていただくために、若いうちから幅広い仕事を経験してほしいと考えています。

―最後に学生の皆さんにメッセージをお願いします―

平尾さん: 日医工では、錠剤や注射剤など、日本の医療に欠かせない多様な医薬品に携わり、幅広い経験を積めます。変化の大きい環境だからこそ、より良い方法を考え、挑戦する姿勢が大切です。入社時からすべての知識は必要ありません。失敗から学び、周囲と相談しながら、薬剤師資格を出発点に自分らしいキャリアを築いてほしいと思います。
Hさん:  品質管理の一番の仕事は、製品や、製品が出来上がる過程に使用されるすべての材料の品質を確認し、患者さまの健康を守る存在であり続けることだと思っています。そして、日々の業務の中で、製品ごとの異なる特性を学び、薬学部で学んだ内容とともに、品質評価に活かしてく面白さがあります。皆さんの疑問や新しい発想も、より良い品質につながります。薬学で培った知識を、ものづくりやデータ分析、問題解決に活かしてください。

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A PRIVATE DAY
プライベートな一日

平尾さん: 釣りが好きで、社内の釣り仲間と船を貸し切って海へ出ることがあります。釣った魚を料理屋に持ち込み、プロに調理してもらい味わいながら釣果を語り合う時間も楽しみの一つです。
Hさん: 本格的ですね。船舶免許もお持ちだと伺って驚きました。私は車を運転することが好きで、休日には一人で遠方まで出かけることもあります。
平尾さん: 仕事を離れて好きなことに打ち込む時間は、よい気分転換になりますね。
Hさん: そうですね。知らない土地を訪れたり、普段とは違う景色に触れたりして、適度にリフレッシュしながら仕事もプライベートも楽しんでいます。