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Infection Control vol.18AFSの視点とカンジダ血症への
薬剤師の実践介入

監修:兵庫医科大学 感染制御学
助教 植田 貴史 先生

AFSの視点とカンジダ血症への薬剤師の実践介入


兵庫医科大学 感染制御学
助教 植田 貴史 先生

抗真菌薬適正使用支援(AFS: Antifungal Stewardship)は、抗菌薬適正使用支援(AS: Antimicrobial Stewardship)と同様に重要性が高まっています。特に真菌感染症の中でもカンジダ血症は予後が悪いことが示されており1)、抗真菌薬に精通した薬剤師の積極的な介入が求められます。しかし、実臨床ではAFSはASに比し、実施施設が未だ少ないのが現状です。

Vol.18では、AFSの基本的な考え方を整理しつつ、カンジダ血症における薬剤師の実践的な介入ポイントを紹介します。

目次

抗真菌薬適正使用支援(AFS)における薬剤師の役割

AFSは医療現場においてASと同様、薬剤の不適切な使用による耐性化を防ぎ、適正使用を推進する必要から重要性を増しています。抗真菌薬を不得手とする薬剤師は多いかと思います。しかし、現在本邦で使用可能な抗真菌薬は抗菌薬に比し数が少なく、選択肢が限られています。したがって、ポイントを抑えることができれば、AFSにおいて薬剤師の専門性を活かす機会はたいへん多いと考えられます。

例えば、抗菌薬とも共通する課題として、薬剤の相互作用への対応があります。アゾール系抗真菌薬は相互作用が多く、抗菌薬以上に注意が必要です。こうした薬物相互作用の管理は、薬剤師の専門性が最も発揮される領域の一つです。

また、抗真菌薬は薬価が高く、使用量の適正化は医療経済の観点からも重要です。薬剤師が不適切な使用を防ぐことができれば、治療の質を維持しつつ、医療費抑制にも貢献できます。

真菌感染症における初期対応の課題

細菌感染症では、発熱時点で感染症を疑い、血液培養と同時に抗菌薬を開始することが多いため、治療の遅れは比較的少ないのが現状です。一方、真菌感染症は、初期段階からの想定・治療は極めて難しく、血液培養で真菌が検出されて初めて抗真菌薬の投与が開始されることが多く、その結果、治療開始が1~2日遅れ、予後が悪く、死亡率が高くなることが問題になっています。

真菌感染症の中でも特に予後が悪いカンジダ血症1)は、当院では、血液培養が陽性となった時点で、感染制御部門およびAFS薬剤師である私へ速やかに連絡が届く仕組みを整えており、原因真菌の確認や初期対応を含む必要な措置を即座に開始できる体制を確保しています(図)。

真菌では、一般細菌に比べて発育が遅いため、菌名が判明するのを待たずに、エンピリックセラピーとして抗真菌薬による治療を開始し、治療効果が不十分であれば早期に抗真菌薬の見直しを検討するという基本的な考え方は、今も変わりません。

最近では、医療機関によっては質量分析法(MALDI-TOF MS)を導入しており、真菌が十分に発育していなくても、当日または翌日にはおおよその菌種が推定できるようになっています。従来のように培地に真菌を塗って発育を待ち、菌の種類を判断していた時代とは異なり、より迅速な同定が可能になってきました。

各施設の実状に応じたマネジメントのために

カンジダ血症のマネジメントにおいては、バンドル(表1)の遵守が治療成績の向上に直結します。バンドルの各項目を確実に実施できるよう支援することは、薬剤師の重要な役割の一つです。各施設の実状に応じたバンドルの運用やチェックリストの独自作成などは、薬剤師が積極的に関与でき、実効性の高い取り組みといえるでしょう。カンジダ血症のマネジメントバンドルを体系的に管理することは、治療の質を高めるとともに、医療資源の適正使用にもつながります。

カンジダ血症マネジメントにおける優先順位に基づく介入戦略

カンジダ血症の管理においては、バンドルを網羅的に行うことが基本ですが、私が特に優先度が高いと考えているのは、「①カンジダ血症診断後24時間以内にCVC(中心静脈カテーテル)抜去」「④眼科的精査」「⑤血液培養陰性化確認」の3つです。可能であれば、各抗真菌薬の特徴を把握して「抗真菌薬の選択(初期および効果不良時等の変更)」にも関与できることが理想です。

①カンジダ血症診断後24時間以内にCVC抜去

CVCの抜去は最優先事項です。真菌は異物にバイオフィルムを形成しやすく、これが感染の持続や治療抵抗性の原因となるからです2)。バイオフィルムの存在は死亡率の上昇にも関与しており3)、海外のガイドラインでもCVC抜去は基本とされていますが4)、「点滴ができない」などの理由から主治医の理解が得られないことが少なくありません。そうした場合は、抗真菌薬の投与をしながら、2日後くらいに再度血液培養を行ってもらうように依頼します。そこで、引き続き陽性であれば、CVCが感染源である可能性が高いことを主治医に伝え、抜去を再提案すると良いと考えます。

最初から「カテーテルを抜いてください」とお願いしても、すぐには対応してもらえないことがありますが、実際に真菌が再検出されると主治医の考えも変わってきます。再度の血液培養を行い、主治医とともに陽性結果を確認したうえで、「やはりカテーテルを抜かないと効果が出にくいのです」と丁寧に伝えることで、「分かりました、抜きます」と応じてもらえるケースが多くなります。これは、ある意味で“交渉”のようなもので、想像以上にカテーテル抜去に慎重な医師は少なくありません。

④眼科的精査

カンジダ血症では、眼病変の合併が認められることがあるため、眼科的精査はとても重要です。私自身、日本全国の菌血症1,089例を集計したデータから、19.5%に眼病変が確認されたことを報告しています。

当院では血液培養でカンジダが検出された場合、全例に眼科的精査を行っています。初回で異常がなくても、後日眼病変が出現するケースもあるため、必要に応じて2回目の眼科的精査を行います。実際、初回で異常がなくても、2回目の眼科的精査で6.8%に新たな病変が確認されています(表2)。最近では、眼科医にもカンジダ血症における眼科的精査の重要性が浸透しつつあり、自主的に精査を行ってくださるケースも増えています。眼科医が常駐していない、あるいはいない医療機関では、往診など地域での柔軟な連携が求められます。

⑤血液培養陰性化確認

カンジダ血症の治療マネジメントバンドルでは、「⑧血培陰性化かつ臨床症状改善から最低2週間治療」とあります。しかし、ここで強調したいのは、血液培養陰性化確認の最も重要な目的は、「治療期間を決めること」よりも、「現在の治療が有効かどうかを評価すること」だということです。陰性化が確認できなければ、治療が奏功していない可能性があり、治療の見直しや感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎などの合併症の有無を検討する必要があります。

現在の治療が患者さんにとって本当に効果的であるかを常に評価し続ける姿勢はとても大切です。血液培養の再検は、治療効果を見極めるための重要な判断材料なのです。この点については、現場での理解がまだ十分とは言えず、今後の啓発が必要だと考えています。

カンジダ血症に対する治療選択

最後にカンジダ血症に対する治療選択ですが、初期治療では有効性および安全性の面からキャンディン系抗真菌薬が第1選択として推奨されています5)。しかし、septic shockなどの重症例では、初期治療から殺真菌活性が高いアムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)の選択が推奨されています5)。

また、カンジダ血症診断後、眼病変が認められた場合、キャンディン系は眼組織への移行性が低いため、治療薬の変更が必要になります。このようなケースでは、アゾール系やL-AMBへの切り替えが検討され、L-AMB単独では移行性に不安がある場合には、フルシトシン(5-FC)との併用が推奨されます。患者さんの病態や合併症を踏まえた柔軟な薬剤選択も薬剤師に求められる役割です。

これまで、カンジダ血症の重症度の評価には、侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドラインでも、APACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)Ⅱscoreが記載されていました5)。しかし、この重症度評価は評価項目が多く、一般病棟では使用することは難しく、カンジダ血症に特化していない問題点がありました。近年ベッドサイドで簡便に、カンジダ血症患者の重症度を評価できる指標が必要であるとして、Pitt candidemia score (PCS)(透析: 2点、血圧低下: 2点、人工呼吸器管理: 2点、心停止: 4点、意識レベル:0~4点の合計) が報告されており、PCSが4点以上であればL-AMBの投与が提案されています6)。このような指標を用いて、薬剤師が初期治療から貢献できるAFSが理想だと思います。

1)国立健康危機管理研究機構 こちら研究部 国内でよくみられる侵襲性真菌症~カンジダ症~https://www.niid.jihs.go.jp/content2/research_department/bioact/20250404153754.html(2026年2月閲覧)

2)Tendolkar P, et al. Infect Immun. 2004; 72(10): 6032-9.

3)Tumbarello M, et al. PLoS One. 2012; 7(3): e33705.

4)Pappas P, et al. Clin Infect Dis. 2016; 62(4): e1-e50.

5)日本医真菌学会 侵襲性カンジダ症に対するマネジメントのための臨床実践ガイドライン 2021

6)Ueda T, et al. JAC-Antimicrobial Resistance; 7(3): dlaf078

Column

侵襲性アスペルギルス症におけるAFS

侵襲性アスペルギルス症とカンジダ血症の大きな違いは、診断の難易度にあります。

カンジダ血症は血液培養の結果から明確に診断されるため、早期からの薬剤師の介入が可能です。

一方、侵襲性アスペルギルス症は、喀痰からアスペルギルスが検出されても、それが肺炎を意味するとは限りません。抗原検査が陽性であっても、それだけで治療介入に踏み切るのは現実的には難しく、薬剤師がその結果をタイムリーに拾い上げて対応するのは容易ではありません。診断には抗原検査に加えて、画像所見や臨床経過を含めた総合的な判断が求められ、どうしても医師の臨床判断が先行します。

正直なところ、私自身も画像を見て「治療すべきだ」と主治医に強く進言するのは簡単ではありません。実際には、医師が先に異常に気づき、診断に至るケースがほとんどであり、薬剤師が診断の契機となることは稀です。

このような背景から、薬剤師が侵襲性アスペルギルス症に関与する場面としては、主治医から相談を受けた際に治療薬の選定や投与設計およびボリコナゾールのTDMを支援するなど、医師の判断を補完する役割が中心になると考えています。診断の主導は難しくとも、治療の質を高めるうえで薬剤師が果たせる役割は確かに存在します。

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