症状・原因
誤嚥性肺炎について
教えてください。
食べ物が食道ではなく気管に入ってしまった場合、通常はむせて気管から排出する反射機能が働きます。
しかし、この機能が鈍ってしまうと、気管に入り込んでしまった食べ物を排出できず、結果として肺炎を起こすことがあります。このように、食べ物や唾液などが、気管に入ってしまうことを誤嚥(ごえん)といい、誤嚥が原因で起こる肺炎を誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)と言います。
不顕性誤嚥(むせない誤嚥)と肺炎
食物の誤嚥に注目しがちですが、忘れてならないのが唾液や胃食道逆流物の誤嚥です。誤嚥性肺炎は食塊だけでなく、これらの誤嚥でも発症します。本人の自覚のない唾液や胃液の不顕性誤嚥が肺炎の主因となることも珍しくありません。
不顕性誤嚥(むせない誤嚥)とは
誤嚥しても「むせ」を認めないことがあり、不顕性誤嚥とよばれています。一方、夜間を中心におこる唾液や胃食道逆流物の誤嚥も不顕性誤嚥とよばれます。
食事のときの誤嚥は察知しやすいので、肺炎の原因として挙げられることが多いです。一方、夜間を中心とした不顕性誤嚥は目立たないですが、実は誤嚥性肺炎の大きな一因です。肺炎に罹患した高齢者の歯に放射性同位元素を付着させたところ、翌日には71%の症例で放射性同位元素が肺に取り込まれていたとの報告があります1)。これは夜間に唾液誤嚥をしていることを意味し、高齢者の肺炎には不顕性誤嚥が大きく関与していることが示唆されます。
咽喉頭逆流症
胃の内容物が胃から食道に逆流する胃食道逆流症(GERD)は広く知られていますが、その逆流物がさらに咽喉頭に達しているときには咽喉頭逆流症(LPRD)と呼ばれます2)。GERDでは胸やけ等の胸部症状が主体ですが、LPRDでは咽頭痛、咽喉頭異物感、嗄声等を呈するが、咳はでない(むせない)で誤嚥性肺炎の原因となります。
「症状・原因 食べていなくても誤嚥性の肺炎になりますか?」参照
参考文献
1)Kikuchi R, Watabe N, Konno T, et al: High incidence of silent aspiration in elderly patients with community-acquired pneumonia. Am J Respir Crit Care Med 150: 251-253, 1994.
2)Koufman J, Sataloff RT, Toohill R. Laryngopharyngeal reflux: consensus conference report. J Voice 10: 215-216, 1996.