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DYSPHAGIA Q&A摂食嚥下障害Q&A

監修:浜松市リハビリテーション病院 
病院長 藤島一郎

摂食嚥下障害 質問シート

15問で患者さんの
飲みこみをチェック

摂食嚥下障害はその特徴が日常生活に現れる可能性が高く、日頃診療されている患者さんやそのご家族に対し、
簡単な質問をすることで摂食嚥下障害の可能性を判定できます。
薬を飲むことに抵抗のある患者さんの服薬QOLを上げるためにぜひお役立てください。

摂食嚥下障害 質問シート
解説動画

※解説動画中の「摂食嚥下障害 質問シート」は、
ダウンロードいただける質問シートと一部デザインが異なりますが、質問項目は同様となります。

資料と活用事例

  • 「摂食嚥下障害 質問シート」PDFをダウンロード
  • 「摂食嚥下障害 質問シート」ご活用事例紹介
  • 「摂食嚥下障害質問紙スコア評価式」PDFをダウンロード
  • 摂食嚥下障害質問紙スコア評価式

摂食嚥下障害
質問シートの解説

  • Q1 :肺炎と診断されたことがありますか?

  • 嚥下障害があると肺炎をしばしば繰り返します。嚥下障害の診療において肺炎の既往は必ず確認します。
    2011年に肺炎が脳血管疾患を抜いて日本人の死因の第3位になりました。
    特に高齢者の肺炎の原因には誤嚥が大きく関与しています。肺炎の症状は発熱や膿性痰、呼吸苦などが典型的ですが、高齢者では元気がない、寝てばかりいる、食欲がないなどの非特異的な症状のみが見られることも多く注意が必要です。

  • Q2 :やせてきましたか?

  • 低栄養状態を疑う症状です。慢性的なエネルギー摂取不良に陥ると、体内のタンパク質や糖質、脂質を分解してエネルギーを産出するようになるため、筋肉減少症(サルコペニア)をきたし、嚥下障害が更に悪化することもあります。
    低栄養状態では免疫力も低下して肺炎などに感染しやすくなります。経口摂取が不十分なときは、経管栄養や中心静脈栄養などを行いながら嚥下訓練を行います。
    長期的な訓練が必要なときは、胃瘻も重要な選択肢となります。

  • Q3 :物が飲みこみにくいと感じることがありますか?

  • 口腔や咽頭の通過障害を疑う症状です。嚥下障害はさまざまな疾患に伴って生じる症候群であり原因の検索が必要です。
    器質的原因には腫瘍や頸椎病変などがあります。
    機能的原因としては脳卒中や神経疾患、末梢神経障害(反回神経麻痺など)、筋疾患(筋炎など)も含まれます。
    薬剤の副作用、経鼻栄養チューブ、気管カニューレ、気管挿管後、頭頸部の術後などは医原性の嚥下障害の原因となります。

  • Q4 :食事中にむせることがありますか?

  • むせは誤嚥の重要な症状の1つです。
    誤嚥はいろいろな原因で起こります。特定のもの(汁物など)でむせるのか、疲労などにより食事の後半でむせるのかなど、摂食場面を観察することが大切です。
    誤嚥には、むせや咳などの反応を示す顕性誤嚥(audible aspiration)と、反応がない不顕性誤嚥(silent aspiration)の2つがありますが、咽頭感覚が低下している患者(特に高齢者)では不顕性誤嚥をしばしば認めるため、特に注意が必要です。

  • Q5 :お茶をのむときにむせることがありますか?

  • 30ml水飲みテストを行ってみましょう。
    飲み方でむせたりむせなかったりします。すすり飲みは危険です。
    適切な飲み方の指導によって症状が改善することが多くあります。
    むせるから水分を取らないという人がいますが、脱水や脳梗塞・心筋梗塞などの発症のリスクにつながります。
    また、脱水は嚥下機能低下にもつながります。嚥下機能低下の予防・改善のための嚥下体操含め、誤嚥性肺炎を併発する前に適切な対策を立てなければなりません。

  • Q6 :食事中や食後、それ以外の時にものどがゴロゴロ(痰がからんだ感じ)することがありますか?

  • 飲食物・唾液の咽頭残留が疑われます。
    咽喉頭や気道粘膜の感覚低下に伴い、嚥下反射・咳嗽反射が減弱すると不顕性誤嚥につながることもあります。
    パーキンソン病や多発性脳梗塞などが隠れている場合もあります。
    症状がひどい場合は、嚥下造影検査などで嚥下評価をして対策を立てる必要があります。
    咽頭残留除去のために随意的な咳嗽と口腔ケアが重要です。
    食事中の咽頭残留除去には、複数回嚥下や交互嚥下が有効です。

  • Q7 :のどに食べ物が残る感じがすることがありますか?

  • 飲食物の咽頭残留感は、嚥下筋力の低下や食道入口部の開大不全によって起こる症状です。
    食事中や食後に咳払いをすることと口の中を清潔に保って肺炎を予防することが大切です。
    症状がひどい場合は嚥下造影検査などで嚥下評価を行ない、対策を考えます。
    原因は様々で、加齢によるサルコペニアであったり、他の神経筋疾患が潜んでいる場合もあります。
    原因に応じて嚥下筋力増強訓練など嚥下リハビリが有効です。
    窒息や誤嚥のリスクが高いため、嚥下機能に応じた食品を選んで食べるようにすると良いでしょう。

  • Q8 :食べるのが遅くなりましたか?

  • 食物認知、口への取り込み、食塊形成能、口からのどへの送り込み、咽頭期嚥下の低下など様々な原因により食事時間は遅くなります。
    嚥下機能検査やスクリーニング検査などを用いてどこに問題があるかを分析し、対策を立てる必要があります。
    特に咬合力(噛む力)の問題で摂食時間が遅延するようになると、軟らかい食事を好むようになり、栄養素の偏りや肥満につながります。
    また、食事時間の延長は疲労感につながり、疲労感から十分な摂取量が確保できない場合は適切な食形態の選択や補助栄養の使用を検討します。

  • Q9 :硬いものが食べにくくなりましたか?

  • 咬合力(噛む力)低下は残存歯数・う蝕・歯周病が原因のこともありますが、噛むために必要な筋力の低下も考えられます。
    適切な歯科治療を受け、咬合力を回復させることと口の機能を保つような筋力増強訓練を行うことが大切です。
    咬合力が低下すると、野菜・肉類など硬いものを避けるようになり、栄養のバランスが崩れ、食欲の低下にもつながります。
    摂食嚥下障害対策として、口腔環境を整えることも重要です。

  • Q10 :口から食べ物がこぼれることがありますか?

  • 舌・口唇の運動機能の低下・麻痺による感覚障害を疑う症状です。
    原因としては加齢、脳血管障害、パーキンソン病などの神経筋疾患、廃用症候群等が考えられますので、頻繁に起きるようであれば、専門家に相談する必要があります。
    また、認知症の場合、一口量が多く、食べるペースが早くなりがちで、口から溢れるケースがあります。食べる量やペースを考えながら、必要栄養量をこぼさずに摂取できているか確認する必要があります。

  • Q11 :口の中に食べ物が残ることがありますか?

  • 麻痺による感覚障害や舌・口唇・頬の運動機能低下を疑う症状です。
    嚥下後も舌の上や口蓋に食物が残留する場合は、舌の運動機能の低下を疑います。
    舌の運動機能が低下すると、舌と口蓋との接触が弱くなり舌圧が低下します。その結果、咀嚼時の食塊形成は不十分になり、口腔から咽頭への食塊の搬送や嚥下も困難になります。
    そのような場合は、舌の運動療法による筋力向上や舌接触補助床(PAP)などの補綴装置を用いて口腔内形態の改善を行います。

    ※:舌接触補助床 PAP(Palatal Augmentation Prosthsis)
    口腔癌などによる舌の切除や脳梗塞・神経筋疾患などにより舌の機能的・器質的異常がある患者が適応となる。
    上顎に装着し、口蓋と舌の距離やスペースを埋め、食物の通りや構音を改善するための装置。

  • Q12 :食物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることがありますか?

  • 胃食道逆流症を疑う、食道期嚥下障害の症状です。
    胃酸など消化液・食物の慢性的な逆流は逆流性食道炎をきたし、食道癌の危険因子です。
    胃カメラでは食道粘膜炎が明らかでない非びらん性胃食道逆流症は、問診や内服の治療効果から診断します。
    消化液が咽頭まで逆流した咽喉頭酸逆流症は、嗄声・咽頭炎・副鼻腔炎・中耳炎などをきたします。
    夜間睡眠中無自覚に気道に侵入・誤嚥すると、肺炎(肺臓炎)をきたすこともあります。

  • Q13 :胸に食べ物が残ったり、つまった感じがすることがありますか?

  • 食道の器質的狭窄か食道蠕動機能低下を疑う食道期嚥下障害の症状です。
    食道器質的狭窄:
    ときに食道癌があり、早期に胃カメラ等で精査する必要があります。大動脈瘤などで食道が圧迫されたものは胸部CTが有用です。
    食道蠕動機能低下:
    迷走神経麻痺や加齢等による場合は生理的食道狭窄部や食道下部に残留しやすく、食道アカラシアによる場合は、食道胃接合部の無弛緩により食道下部に残留と異常拡張を呈します。食道造影検査が有用です。

  • Q14 :夜、咳で眠れなかったり目覚めることがありますか?

  • 口腔咽頭分泌物や後鼻漏(鼻炎・副鼻腔炎)があると、咽頭残留して嚥下障害が顕在化しやすくなります。
    歯科での口腔ケア、耳鼻咽喉科で治療が有効です。
    胃食道逆流症で消化液が喉頭を直接刺激、または食道残留物で食道の神経が刺激され間接的に咳嗽をきたすこともあります。
    食後2〜3時間は臥床しない、睡眠時上半身を15°程度起こして就寝するなどの生活指導が大切です。
    不眠だからといって安易な眠剤使用は避けるようにして下さい。

  • Q15 :声がかすれてきましたか?(がらがら声、かすれ声など)

  • 声帯の器質的異常か運動障害を疑う症状です。
    特に嚥下障害関連では胃食道逆流・咽喉頭酸逆流による慢性声帯炎が考えられます。
    声帯運動障害では声帯麻痺により声門閉鎖不全を生じて、気息性嗄声(抜けた声)を呈し、特に液体で誤嚥しやすくなることがあります。
    声帯麻痺は延髄の中枢障害または頭蓋底-頸部-縦隔の末梢神経障害により生じ、ときに同部位の腫瘍によることもあります。食物や唾液が気道に入り込んでいたり、咽頭に残っていても声が変わることもあり、精査が必要です。

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