ご活用事例紹介
総合メディカル株式会社 そうごう薬局 東出雲店さま
06「スコア評価式摂食嚥下障害質問シート」で早期発見・早期対応、
トレーシングレポートにも有効活用。
島根県松江市 総合メディカル株式会社 そうごう薬局 東出雲店取材日:2023年12月14日
総合メディカル株式会社 島根ブロックでは、島根県内の4薬局 と共同で、来局される高齢者に対して、摂食嚥下障害の早期発見・ 早期対応、誤嚥性肺炎への移行予防を目指し、「スコア評価式摂食 嚥下障害質問シート(以下、スコア評価式質問シート)」を用いた 取り組みを行いました。その内容について、本取り組みに関わられ たそうごう薬局 東出雲店(取材当時)の佃主税先生、島根ブロック 長の伊藤正博先生にお話を伺いました。
左:そうごう薬局 東出雲店(取材当時) 佃主税先生
右:総合メディカル株式会社 島根ブロック長 伊藤正博先生
「スコア評価式質問シート」
はどのような経緯で導入されたのでしょうか?
来局される患者さんは高齢者が多く、服薬困難、摂食嚥下障害の方も少なくありません。なかには誤嚥性肺炎を発症される方もいらっしゃって、かねてより、薬局として摂食嚥下障害の重症化や誤嚥性肺炎への移行を減らすことはできないかと考えていたところ、学会で「スコア評価式質問シート」の存在を知りました。これなら、通常業務の合間にできますし、特段のスキルも必要ありません。また、結果がスコアで確認できるので、患者さんにも分かりやすく、説明もしやすいと考え、導入に至りました。
どのようにご活用されたのでしょうか?
初めての取り組みでしたので、各薬局それぞれで高齢者にお声がけし、同意の得られた方に実施するようにしました。「スコア評価式質問シート」は8点以上で「摂食嚥下障害の疑いあり」、4~7点で「オーラルフレイルの疑いあり」とされていますので、4点以上の高齢者には、薬局で服薬指導に加え、嚥下体操の紹介、必要に応じて歯科受診勧奨やトレーシングレポートを用いた医歯薬連携を試みました。スコア評価式質問シートの解説はこちら
ご活用の結果について教えてください。
2023年4月からの2ヵ月で、118名の方(70歳以上)に実施いたしました。4~7点の方が30名(25.4%)、8点以上は10名(8.5%)でした(図1)。4点以上だった40名のうち、32名(80%)については主治医に「スコア評価式質問シート」のスコアを記載してトレーシングレポートを提出しました。
その他、薬局での対応として「嚥下体操・口腔ケアを勧める」24名(60%)、「歯科受診の勧奨」6名(15%)、「とろみ剤や服薬補助ゼリーを勧める」3名(7.5%)などを実施しました。また、全体では2名の患者さんに対して「剤形変更の提案」も行いました(図2)。
図1:スコアの分布
対象:70歳以上の来局患者118名
図2:薬局での対応
対象:スコア評価式質問シート4点以上の40名
「スコア評価式質問シート」をどのように
トレーシングレポートに活用されましたか?
「スコア評価式質問シート」を用いること、その結果を処方元である医療機関にフィードバックすることについては、予めご了解をいただいて、取り組みは開始するようにしました。どの医療機関も「患者さんにとっても良いこと」として、好意的な反応でした。
私達薬剤師も、「スコア評価式質問シート」の結果を踏まえて患者さんへの説明や医師への提案が出来るため、評価する手間以上の成果を得られたと感じています。なお、トレーシングレポートを医師に提出する際、記載内容を以下のようにブロックで統一しました。
【トレーシングレポートへの記載内容】
- ① スコア評価式質問シートの実施結果(4点以上or8点以上)
- ② 内容(実際の症状など)
- ③ その他の情報(根拠となる事項等・患者背景・服用薬剤等)
- ④ 薬剤師の判断
- ⑤ 提案事項
- ⑥ 引用・参照した文献等
今回の取り組みや結果から、どのようなことが得られましたか?
普段、自身で来局することのできる高齢の患者さんのうち、4点以上の方が約3分の1もいらっしゃったのは意外でした。日頃の応対では訴えは無かったのですが、チェックシートで評価することで自覚症状があることが分かった方もいらっしゃいました。
そのような方でも、このようにスコアとして結果が出てくると、患者さんご本人の「気づき」を促し、問題点や情報を共有しやすくなります。当然、我々からの提案や指導にも前向きになっていただけますし、現に多くの方に口腔ケアや嚥下体操のご紹介ができました。
この取り組みで、実際にどこまで摂食嚥下機能の改善や誤嚥性肺炎の予防に繋がったのかまでは分かりませんが、「スコア評価式質問シート」が患者さんや地域の医師・歯科医師とのコミュニケーション(連携)の一助となり、関わった薬剤師も患者さんの摂食嚥下や口腔機能により関心を持つ良いキッカケになったと思います。
今後、「スコア評価式質問シート」をどのようにご活用されますか?
「スコア評価式質問シート」は、処方や剤形変更の判断材料、その後のフォローアップの際の指標として活用することが可能です。また、薬局で定期的にチェックすることができれば、より早期(オーラルフレイル)の段階から、継続的な介入が可能となり、摂食嚥下障害の早期発見・対応や誤嚥性肺炎の予防にも貢献できる可能性があります。
今後は、服用状況の確認やフォローアップの際に、「スコア評価式質問シート」を定期的に活用することで、患者さんや多職種の方々と継続的なコミュニケーションができるよう取り組むとともに、これからも地域連携薬局や健康サポート薬局として、地域医療に貢献できるよう努めて参ります。
取材ご協力
総合メディカル株式会社
そうごう薬局 東出雲店
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