薬・服薬の工夫
薬の上手な飲ませ方について教えてください。
経口投与の場合
錠剤の場合は、ゼリーの中に埋めて飲んでいただくと良いでしょう。食後よりも食事中に内服すれば、咽頭や食道で止まってしまっても、続いて入ってくる食物におされながら胃まで運ばれるので安心です。
粉薬を直接口に入れると、口の中に広がりむせることがあります。服薬ゼリーなどに混ぜて内服する方法があります。錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりして、食事に混ぜる場合もありますが、この方法は、食べ物の味が変わってしまったりして、かえって服薬や食事をいやがられてしまう場合があります。
また、薬を取り出すとき、片麻痺などの運動機能障害があって不自由なときはあらかじめ袋に少し切り込みを入れるだけでも、服薬しやすくなります。患者さんにあった方法を工夫しましょう。
経管投与の場合
錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりせず、錠剤・カプセルをそのまま温湯に入れて崩壊・簡易懸濁させる「簡易懸濁法」があります。薬剤によっては「簡易懸濁法」に適さないものもあり注意が必要です。各製品のインタビューフォーム等をご確認ください。また、「簡易懸濁法」について詳しく知りたい方は「内服薬経管投与ハンドブック 第3版」(じほう社)をご確認下さい。
参考
昭和大学薬学部HP:倉田なおみ先生「簡易懸濁法」
「内服薬経管投与ハンドブック 第3版 ―簡易懸濁法可能医薬品一覧」倉田なおみ著 じほう刊
嚥下障害がある患者さんの「コンプライアンス」と「アドヒアランス」
~「欠かさず服薬しているか」とともに「きちんと飲めているか」に注意を~
コンプライアンス(compliance)とは、医学上の見地から医療従事者が勧める治療を患者さんが遵守することです。アドヒアランス(adherence)とは、治療方針の決定に納得して患者さんが積極的に治療に参加することです。近年、患者さんが主体的に関わるという、心理側面を含んだアドヒアランスの概念が重視されています。
患者さんごとのアドヒアランスの程度を把握しようとの試みがいくつかあります。たとえば東京大学と日本福祉大学のグループは、慢性疾患患者の服薬における「医療従事者との協働性」「知識情報の入手と利用における積極性」「納得度および生活との調和度」「遵守度」から服薬アドヒアランスの尺度を作っています*1。
一方、嚥下機能が低下している患者さんでは、アドヒアランスにおける大きな壁があり、そのことを自覚・確認できていない場合があります。本人やご家族、介護スタッフ・処方医が口腔内や咽頭の残薬に気づいていなければ、内服できていないことになります*2。内服したと思っても実際に、消化管にたどり着かなければ、治療への意欲(アドヒアランス)は高くても、治療は奏功しないと云うことになります。
「欠かさず服薬しています」と言っている患者さんについても嚥下機能を確認し、服薬に嚥下機能の壁はないかをよく検討し、必要であれば剤形の変更や服薬の工夫をすることが必要です。嚥下障害がある患者さんは本当に「薬が飲みこめているか」に十分注意してください。
文献
*1 上野 治香ほか. 日本健康教育学会誌 2014; 22: 13-29.
*2 野﨑園子.日本静脈経腸栄養学会雑誌 31(2):699-704:2016