ケア・対処・訓練法
腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)の方法とポイントは?
腰上げ空嚥下訓練法の実際
仰向けで腰の下にクッションや枕を入れて、腰を上げた姿勢(食道が重力に逆らう姿勢)で唾液を嚥下(空嚥下)します(図1)。
姿勢:腰上げ姿勢(ブリッジ姿勢)
回数:1セット10回 1日1~2セット 嚥下と嚥下の間は10秒以上間隔をあける
適応:逆流性食道炎(GERD)症状のある方
嚥下造影検査で食道に食べ物が残ったり逆流がみられる方

図1:腰上げ空嚥下訓練
食道が抗重力位になるように腰の下に枕やクッションを入れて行う。
図2:自宅での腰上げ空嚥下訓練
自宅にある枕やクッションを使えば、自宅でも続けることができます。しかし、日中に仰向けになるのが面倒で、実施率が下がってしまう可能性もあります。従って、起床時や就寝時に、使っている枕を腰の下に置いて行うと導入しやすいでしょう。

POINT:準備
クッションや枕などを腰の下に入れた際、食道が抗重力位になることを確認します。普段使っている枕を腰の下に入れて腰上げ姿勢(ブリッジ姿勢)を作り、その状態 で飲み込む(空嚥下)練習をします。
POINT:注意事項
- ① 食後は2時間以上開けて空腹時に行いましょう。
- ② 腰痛がある方や、腰の変形が強く腰上げ姿勢(ブリッジ姿勢)が取れない方は、控えるようにしてください。
- ③ 咽頭に唾液が貯まっている方や、唾液を嚥下するだけでも誤嚥する可能性がある方は注意が必要です。担当の医師にもご相談ください。
腰が曲がっている高齢者や介助が必要な方は、理学療法士や作業療法士などの助けを借りて姿勢を調整するとよいでしょう。言語の障害(失語症など)や認知症などにより指示が理解できず空嚥下ができない方でも、口腔のアイスマッサージなどで嚥下反射を誘発すれば訓練可能です。
※動画もご参照ください。
「腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)の方法解説」
腰上げ空嚥下訓練の評価について
- 1) 逆流性食道炎の症状がある方は、症状の改善を確認するために問診票(Fスケール問診票など※)を用いると治療効果を確認できます。
- 2) 嚥下造影検査を行うと、訓練後に食道残留が改善していることがあります。
動画1:腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)の前後の食道残留
※Fスケール問診票:胃食道逆流症(GERD)の症状を評価するための質問票。12項目の質問から構成され、各質問に0~4点で回答し48点満点(点数が低い方が良い)で評価します。8点以上で、逆流性食道炎の可能性が高いと判断します。治療の効果判定にも有用といわれています。
食道の病気には悪性腫瘍などが潜んでいる場合がありますので、症状が強い場合、改善しない場合はすぐ医師にご相談ください。
※「腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)」の解説はこちらから
※腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)の表記について
筆者らは、腰を上げた姿勢での嚥下をブリッジ嚥下(bridge swallowing)と命名して、学会や論文で発表しました。しかし、実際に患者さんに指導する際には、「ブリッジ姿勢」よりも「腰上げ姿勢」と指導した方が、誤解がなく伝わります。また、この訓練では唾液の嚥下(空嚥下)を行いますが、「空嚥下」と説明しないと、「腰上げ姿勢で食べなければならない」と誤解される可能性があります。
従って、下記のように整理するとよいでしょう。
- 意味:腰上げ空嚥下訓練=ブリッジ空嚥下訓練
- 表記:腰上げ空嚥下訓練(ブリッジ空嚥下訓練)
患者さんへの指導や医療者間でのやり取りでは「腰上げ空嚥下訓練」を用いると、より誤解なく伝わるでしょう。
【監修】
岐阜大学医学部附属病院 脳神経内科
浜松市リハビリテーション病院 リハビリテーション科
國枝 顕二郎